■ 家主の末路 ■廃屋に進入し、一階の探索を終えた我々探検隊は二階への階段を発見した。壁の隙間から日が差し込む不気味に明るい階段の先には扉が一つ。いったい二階には何が待ち受けているというのか!? 衝撃の結末が我々を襲う。■ 階段一階には微妙な生活の痕跡を発見することができたがなにかしらの決定的な物を発見できずにいた探検隊は二階への突入を決意する。しかしさすがにこれ以上深入りするのを恐れたのか個性の無い二名はここでリタイヤ。残ったのは
隊長であるオレと鬼川(Myステディ)と八百屋娘(Myストーカー)である。
瓦礫の山の廊下を引き返して玄関に向かう隊員達を完全に見送ってから我々は二階を見上げた。向かって右側の外壁の窓や隙間から漏れる光で階段は妙に明るい。こちら側の窓は封鎖されていないようだ。階段に足を掛けてみるが案外丈夫なつくりらしくこれなら上まで行けそうだ。
一段一段階段を確かめながら昇る。かなりギシギシと音を立てるが小学生の体重で壊れる様子は無い。ただし木製の建物は廃れた材木が苛立っており素手で触ると刺が刺さる可能性がある。手すりには触れずに階段を注意して上る。
■ 廃屋2Fついに階段を上りきった。おかしな構造だが昇ると二畳ほどの空間ですぐ目の前に木製のドアがある。他には何もない。廊下も無いし窓もない。二階は全て一つの部屋なのだろうか・・・? 恐る恐るドアを開けてみる。
鬼川さん(Myステディ)がオレの袖を掴む。うほっ
ドアが開け放たれるとそこは妙な空間だった。一階よりも瓦礫が多く床はふみどころが無い。そして旅館の部屋みたいな構造で手前がわに広めの玄関のような一段低い空間がありふすまを経て奥の間につながっている。ふすまは開け放たれ所々に穴が空いている。そしてその奥の間は十畳ほどの和室が二間続きになっている。
足元は酷いが瓦礫の山を分け入ろうとしたとき、他の隊員の様子がおかしいことに気が付く。二人とも
一点を凝視しているのだ。何があるのか、オレもそこに目を向ける。
目だ。
こちらを見ている。
床から。
正確には床に転がっている人間がこちらを見ている。見ているといっても恐らく見えてはいないだろう。
明らかに死んでいるから。あお向けで大の字に四肢を投げ出し首がのけぞる形でこちらに向いている。口は半開きで目が大きく見開かれている。瓦礫に半分埋まっている形だから最初は気付かなかったが明らかにそれは
死体のようだ。
キャ━━━━━━(゚∀゚|||)━━━━━━ !!!!! 誰かが叫んだ。自分かもしれないし女の子のどちらかかもしれない。そんなことはどうでもよかった。堰を切ったかのように俺達は踵を返し階段を駆け下り廊下を走り抜け廃屋の外に逃げ出した。恐らく何秒も掛からないくらいの速度で。
■ その後外には途中で引き返した隊員や入らなかった女の子達が待っていた。駐車場の隅に集まりまずは心を落ち着かせ残りのメンバーに状況を説明した。みんな考え込んでしまう。
結局いま思えばくだらない理由だがみんな廃屋に入ったことがばれると親に烈火のごとく怒られるだろうという理由から誰にも言わないことになった。その後遊ぶ気持ちにもなれずに解散となり、オレもみんなを見送って目の前の自宅に帰っていった。家の親は駐車場で洗車していたので一部始終を見ていたが
息子が廃屋でとんでもない物を発見したことまではわからないだろう。
その後は冒険は自粛し、メンバーの中でもその会話が交わされることはなかった。そしてオレは現在の家に引越ししばらくしてから様子を見に行ったら
廃屋は取り壊され我が家を含めた更地に工事が始まっていた。あの死体は見つかったのだろうか。
今思うとあれは本当に死体だったのかは疑問だ。人形かもしれないし錯覚かもしれない。小学生には大きすぎる恐怖のあまり確認を取らずに出てきてしまったため真実はもうわからない。でも三人が三人ソレを見ていること、廃屋の家主は自殺したという情報が出回っていたことなどを加味すると死体であったのかもしれない。
家主は一人だったのだろうか。一階に転がっていた子供用の人形は誰が使っていたのだろうか。子供がいたのかもしれない。事業に失敗し、妻と子供は既にあの家から出て行ったのかもしれない。もしくは俺達が確認していない二階の部屋の奥にいたのかも知れない。死体となって。
なんにせよ今でも忘れられない。あの表情。なにかを睨んだままの顔。自殺した人間が大の字で倒れているのだろうか。状況を察すると
部屋の奥に向いた状態で刺され倒れた。そして自分や家族を屠った犯人が二階から出て行くのを睨んでいたとも取れる。
真相は闇の中だが今でもあの目だけは忘れられない。
夢に出ることもある。二階の扉を開ける子供のオレを毎回静止するもドアは開けられる。
糸冬